「日本のお金持ち研究 (著者:橘木 俊詔/森 剛志) 」によると、日本のお金持ち(年間納税額3,000万円で定義。所得はおよそ1億円)の約45%は、起業家と医者です。
企業家 | 経営幹部 | 医師 | 弁護士 | 芸能人 | スポーツ選手 | その他 |
31.7% | 11.6% | 15.4% | 0.4% | 1.3% | 0.9% | 38.7% |
出典:日本のお金持ち研究より抜粋
上の表は、国税庁「全国高額納税者名簿」(2001年度)に基づき作成したものなので少し古いデータになりますが、起業家がかなり多いのがわかります。次いで医師です。
「経営幹部」は、企業の副社長や監査役、役員のことで、「その他」は、引退者を中心にした高額資産保有者と大土地所有者、区分できない職業に就いている人を指します。
難関資格の弁護士は0.4%しかいないんですね。芸能人より少ないことに驚きました。
このように統計に基づき、日本のお金持ちについて研究したのが、「日本のお金持ち研究」です。
少し古い本(発売日:2005年)ですが、「お金持ちになる方法」を説くのではなく、「お金持ちの実態」を教えてくれる本というのは珍しいなと思い読んでみました。
読んでいて、興味深いと感じた箇所を以下で紹介します。
・富裕層の人たちが受けた教育、そして職業がどのようなものであるか
・富裕層の人たちの親子関係や遺産の授受
・成功する人の人生経路と働きぶりや消費・貯蓄行動について
・日本のお金持ちについてのデータに基づいた観点から考察したい人
本書を読んでの学びと感想
お金持ち上位のほとんどが、オーナー企業家や開業医
日本のお金持ちの45%が企業家、医師であると述べましたが、そのほとんどがいわゆるサラリーマン社長や勤務医ではなく、自分で会社を設立したオーナー企業家や開業医です。
約1億円の所得を手に入れるには、企業や病院に勤めるよりも、「自分で起業してビジネスを成功させる」「開業医となる」ほうが確率が高そうです。
一方で、会社での激しい昇進競争に勝ち、社長となったのに、高所得者として名を連ねないなんて、割に合わないと感じるかもしれません。トップになれば経営責任を取らされることもあるため、オーナー企業家ほどではないにせよリスクもそれなりにありますよね。
日本経済新聞の記事によると、トップではない上場企業の経営幹部(すなわち会社役員)の平均年収は3,200万円だそうです。
その上であるサラリーマン社長はもう少し高い年収なのかもしれませんが、社長になるまでの険しい道のりや社長になってからの責任を考えたら、私はやりたくないなと思ってしまいました。(笑)
やはり社長になるには、昇進競争に勝つ必要があり、昇進競争に勝つには、実績だけでなく、人から愛される力が必要だと思います。(私の会社だけ?)
私の会社にいる昇進が早い人は、仕事ができることはもちろんですが、人とのコミュニケーションを積極的に取り、飲み会にも必ず参加している人が多い印象です。
私が営業職をやっていた時も、上司から「”人脈を広げるため”に飲み会に行け」と言われ、週3~4回ほど飲み会へしぶしぶ参加していましたが、お酒が苦手&人見知りの私は飲み会に参加するのがかなりつらかった思い出です。
そんな思いをあと何十年もして社長になるにしては、リターンが少ないと感じました。(年収何千万も稼ぎたいと思っていないことも魅力を感じない1つの原因かも)
それであれば、少ないリスクでできるスモールビジネスを始め、成功すれば事業を拡大していくというのがリスクが低く、リターンも大きくなる可能性を秘めているのではないかと思いました。
今から医者を目指すのは、学校に通う必要があるため、お金も時間もかかってしまいますが、スモールビジネスであれば今からでも(もしくは働きながらでも)できますよね。
この調査結果でオーナー企業家が名を連ねているのは夢があるなと思いました。
医者の中でも特定専用診療科にお金持ちが多い
高額納税者調査で医師は企業家に次いで多いですが、その中でも特に眼科、美容外科、糖尿病診療科、不妊治療科のような特定専門診療科が多数を占めています。
眼科、美容外科が多い要因の一つとして、「開業の容易さ」が挙げられます。
診療科名 | 全体 | 内科 | 小児科 | 外科 | 美容外科 | 眼科 | 皮膚科 |
診療所開設者 | 28.5% | 39.2% | 32.7% | 19.4% | 80.2% | 45.4% | 43.9% |
出典:厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師調査」2000年版 (日本のお金持ち研究より抜粋)
先に述べたように、勤務医よりも開業医のほうがお金持ちの割合が多いので、開業医の数が多い眼科、美容外科に富裕層が多くなるのですね。
「糖尿病診療科」「不妊治療科」が多いのは、糖尿病患者、不妊治療患者が年々増えているため、需要が高まっていることが考えられます。
勝手なイメージですが、大きい病院の外科の先生とかのほうが給料が良いと思っていたので、この結果に驚きました。
組織より個人の時代と言われていますが、2000年のデータですでにその傾向があったのですね。
組織の中で大金持ちになるには、限界があるのかもしれません。
余暇の過ごし方はレジャー派、仕事派に二分
高額納税者に余暇の過ごし方について調査をしたところ、50歳代以下の年齢層では1位が海外旅行、2位が国内旅行と、レジャー派が多数でした。
しかし、60歳〜80歳代では、1位がすべて「仕事」という回答でした。
「仕事」は40代では4位、50代では3位です。
この結果から年齢が高くなるほど「仕事人間」が多くなるということがわかります。
本書では、歳を重ねるにつれ、次第に自らの仕事が喜びとなり、余暇と仕事の区別がなくなるようになることが要因の一つとして挙げられていました。
この本が出版されたのが2005年なのでその頃の調査だと考えると、当時の40代がバブル世代、50代〜60代が団塊世代といったところでしょうか。
自分の上司を見ていると、バブル世代は長時間労働、接待、勤務時間外も仕事の付き合いで縛られるのが当たり前という感覚の人が多い気がします。
そのことを考慮すると、40歳代の余暇の過ごし方も、仕事が上位にランクインしそうですが、本調査ではランクインしていないということは、単純に年齢の問題なのでしょうか。
理由を考えてみましたが、しっくりくるものが思いつきませんでした。
本書には年齢が上がるにつれて仕事とプライベートの区別がつかなくなるという理由しか述べられていなかったので、他の要因としてどんなものがあるのかが気になります…(こういう理由じゃない?というものがあれば教えてください。)
まとめ
本書は、お金持ちになる方法を説くハウツー本ではなく、お金持ちはどんな人たちなのかについて職業、学歴、暮らしぶりなどの多角的な視点から研究した本です。
統計や独自で行った調査に基づき、お金持ちを分析しており、なんとなく知っていた「経営者や医者はお金持ち」という知識をより深めることができました。
本書は、2005年出版のため、少し古いデータになりますが、第二弾として、「新・日本のお金持ち研究」も出版されています。2014年出版のため、より新しい情報が知りたいという方はこちらのほうが良いかもしれません。
私はまだ読んだことがないので、これから読んでみたいと思います。
本書の情報
出版社 : 日本経済新聞出版
発売日 : 2005/3/1
著書 : 橘木 俊詔 / 森 剛志
単行本 : 227ページ
最新版は以下になります。
出版社 : 日本経済新聞出版
発売日 : 2014/1/8
著書 : 橘木 俊詔 / 森 剛志
単行本 : 256ページ